日本取引所グループ(2023)の調査によると、個人投資家の約半数が年間リターン5%未満で満足しているそうです。しかし、過去10年の日経平均株価の年平均リターンが約12%だったことを考えると、これは非常にもったいない話だと思いませんか?実は、良かれと思ってやっている行動が、あなたの資産が増えるのを邪魔しているのかもしれません。
## 「分散すれば安心」という、一番危険な思い込み
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言は、誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。この言葉を忠実に守り、「リスクを分散するために」と10種類以上の投資信託をNISA口座で買い付けている人も少なくありません。実際に、金融庁の2022年の調査では、NISA口座で10本以上の投資信託を保有している人が全体の20%にも上ることがわかっています。
一見すると、これは賢明な判断に思えます。しかし、ここに大きな罠が潜んでいるのです。
ここで、あなたに「なるほど!」と思ってほしい瞬間があります。分散投資はリスクを下げると教わりましたが、実際にはほとんどの場合、本当のリスク(市場全体が暴落するリスク)は減らせず、将来のリターンだけを下げてしまっているのです。
考えてみてください。日経225に連動する投資信託と、TOPIX(東証株価指数)に連動する投資信託を両方買う。さらに、米国S&P500の投資信託と、全世界株式の投資信託も買う。これらはすべて中身が大きく重複しています。たくさんの種類の野菜ジュースを混ぜ合わせたら、結局よくわからない味の茶色い液体になってしまうのと同じで、それぞれのインデックスの良さを打ち消し合い、結果的に市場平均と似たような、特徴のないポートフォリオが出来上がるだけ。しかも、管理の手間と手数料だけが増えていきます。本当に分散すべきは値動きの異なる資産(株と債券など)ですが、多くの初心者は似たような株式ファンドをたくさん買う「分散ごっこ」で満足してしまっているのです。
## 「最高のタイミング」を狙う人ほど、市場から退場する
投資で成功するイメージは、「安値で買って、高値で売る」ことかもしれません。ニュースで「日経平均、今年最安値!」と聞けば買い、「史上最高値更新!」と聞けば売りたくなるのが人情です。しかし、この「マーケットタイミング」を計ろうとする試みこそ、資産を増やす上で最も非効率な行動の一つなのです。
米国の調査会社Dalbarの有名な研究では、過去30年間、個人投資家の平均リターンは市場平均(S&P500)を大幅に下回ってきました。その最大の原因は、価格の上下に一喜一憂して頻繁に売買を繰り返し、最も重要な上昇局面を逃してしまうことにあると結論づけています。例えば、もし2015年に100万円を日経225連動のETFに投資していたとして、その後の数年間で最も株価が上昇した「たった5日間」を市場から離れていただけでも、あなたの最終的なリターンは半分以下になっていた可能性があるのです。
市場のタイミングを気にし始めると、毎日チャートを見てしまい、本業にも集中できません。実は、この「タイミングを計りたい」という感情的な衝動こそが、最大の敵。だからこそ、baln のようなアプリは、感情を排して淡々と最適な資産配分を維持する「リバランス」を自動で行ってくれるので、心理的な負担を減らしながら合理的な投資を続ける手助けになります。プロでも難しいタイミング予測に時間を使うより、感情に左右されない仕組みを作ることの方が、よほど確実なリターンにつながるというわけです。
## 年1%の手数料が、30年後に数百万円の差を生む
最後の、そして最も見過ごされがちな失敗が「手数料」です。特に銀行や証券会社の窓口で勧められるがままに投資信託を買った場合、知らず知らずのうちに高い手数料を払い続けているケースが後を絶ちません。
「年率1%や2%の手数料なんて、大したことない」と感じるかもしれません。しかし、これはバケツに空いた小さな穴のようなもの。一滴ずつ水が漏れているだけに見えても、長い年月が経てば、気づいた時には中身がほとんどなくなっているのです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で具体的な数字を見てみましょう。毎月2万円を30年間、年率5%で運用できたとします。手数料が年0.2%の低コストな投資信託を選んだ場合、30年後には資産が約1,600万円になります。一方で、手数料が年1.2%のファンドを選んでしまった場合、最終的な資産は約1,380万円。その差は、実に220万円以上にもなります。あなたが受け取るはずだったリターンが、毎年静かに金融機関の利益になっていたのです。金融庁も公式サイトで「長期・積立・分散投資と合わせて、低コストの重要性」を繰り返し強調しているのは、このインパクトがいかに大きいかを理解しているからです。
結論:今日からできる、たった一つのこと
投資で失敗する人の多くは、複雑な金融商品を理解できなかったからではありません。「分散のしすぎ」「タイミング狙い」「高コスト」という、シンプルですが強力な3つの罠にはまってしまっただけなのです。
この記事を読んで、「もしかして自分も…」と感じたかもしれません。でも、大丈夫。今からでも全く遅くはありません。
今日、あなたにできるアクションは一つだけです。ご自身のNISAやiDeCoの口座にログインして、保有している投資信託の手数料(信託報酬)が年率0.5%以下になっているか確認してみてください。 もしそれ以上の手数料を払っている商品があれば、なぜそれを選んだのか、もっと良い選択肢はないのか、一度立ち止まって考える最高のきっかけになるはずです。